下元です。
この1年と半年以上とある預言者の本を読んでいました。
エマニュエル・トッド氏、当ブログでは何度か紹介してきました。
フランスの歴史人口学者、知る人ぞ知る方なのだが、ぶっちゃけ母国フランスを中心に西側諸国のイデオロギーに沿わない書籍や研究ばかり発表するのでうざがられるのを通り越してアカデミー界にはあまり居場所がない風になってしまった。
ある意味不遇ではあるが、しかして孤高の変革者であり、その最終的預言は西側自由主義国の名だたる経済学者と政治学者をぶち◯すことであろうと思われます。

「我々は今どこから来て、今どこにいるのか?」上下巻。
くそ分厚くてぎっちりビッチリと、バリカタ通り越して粉落としな硬さの文体が続く。
その後に再読した「帝国以後」、これではっきりと分かったことがある。
歴史が変わる瞬間が目の前に来ている。
アメリカ合衆国は、経済的にも文化的にも間違いなく崩壊する、しかも数十年以内に!!

僕はいままで、一介の読書家、その末席を汚す身だからこそ偉大な巨人たちの業績を追いかけ続けてきた。
いや、むしろだからこそ判るのだけれども、特にアメリカで教育を受けた先生方はネイティブのアメリカ人だろうと日本人だろうと、ある種のアメリカ型の経済第一主義、マルキシズムイデオロギーという虚偽意識、それはルカーチやマルクスが言うところのものであり認知的にはまさに洗脳だろうけれども、経済が政治と文化と教育やはてはスピリチュアリズムのムーブメントまで決定すると頭から信じて疑わないのだ。
これは、巨大な盲点だ!
歴史上、天才が凡人に敗れた例は少なくない。
智者は知に溺れるのかもね。

トッド氏の発見と業績は、実にシンプルなもので表せられる。
政治と経済を決定するものはもっと深い動態であり、しかもその動態は500~5000年間かけて変動するものだから、そこを見れば今世界が混乱しているように見える理由や、アメリカの崩壊とその後のロシアを中心としたユーラシア大陸に経済の主軸が映る理由がよく分かるようになっている。
経済と政治を決定するもの、それは教育と宗教の名残、そして家族の形態である。
さいきん話題に事欠かない埼玉県は蕨市や川口市のクルド人問題などはこれでよくわかるのだが、彼らは内婚性共同体家族という5000年の歴史を持つ完全に無意識に支配され司られている家族形態の価値観を持つが、我々日本人はドイツ人や韓国人やスウェーデン人やノルウェー人と同じ直系家族社会の価値観を持つ。
それ故に、価値観面で衝突が起こり、さいあくは戦争にコミットせざるを得ないのだ。

こういう話を聞くと怒り出す人がいて当然と思う。
それはね、あなたがアメリカに洗脳されてしまっているから、ルカーチやマルクスが言うところの虚偽意識にあり、認知的には洗脳されているからなんだよ。
アメリカは、イギリスと同じ絶対核家族の家族形態の価値観を持つ上に、いまやピューリタンやキリスト教カルヴァン派の教えや精神などどこ吹く風な、サッチャリズム以後のネオリベの精神で汚染されていて、個人主義的自由主義と民主主義こそ正義であると信じて疑わないネーションステート、民族、国民国家集団なのです。
日本は、ドイツとともに第二次世界大戦で敗北し、アメリカの保護領として、しかも貿易収支があほみたいに赤字を垂れ流しても実際に物を作るのは日本やドイツでありアメリカは国際基軸通貨米ドルでファイナンスすればあれら赤字はチャラになるとんでもない略奪国家を養わされ続けている。
直系家族社会と絶対核家族社会の価値観は全く違う、にもかかわらずアメリカと仲よさげに見えているのはまさに我々が米国の財布にされているくらいに飼いならされているからだ。

個人主義的自由主義とネオリベのイデオロギー。
今、このイデオロギー、おそらくは絶対核家族に特有の決定論的な自由主義と米国エスタブリッシュメント層を中心にばらまかれるプロパガンダに、我々日本人もやられているのだが、トッド氏はここで重大な事実を、そう、憶測とかの思い込みじゃなくて事実を述べている。
世界のほとんどの国や民族は父系制であり、世界の7~8割は米、英、仏を中心とする自由主義陣営が主張するあらゆるグローバルスタンダードにうんざりしているんだと。
実際、元マクダネルダグラス社製F-15戦闘機、アメリカの象徴的主要兵器の運用を許可されているあのサウジアラビアでさえ2003年の9.11テロ以後のアメリカの軍事行動、外交に対して協力姿勢を示さず、米国は理解できない混乱に囚われたそうですが、これを象徴とするように今や世界中が日本を含めた西側西洋主義者にNO!を突きつけています。

さらにまずいのは、やっぱりというか、去年もブログに書きましたが、やっぱり昨今の戦争は西側が経済的にこてんぱんにされて終わりそうです。
もちろん、トッド氏の本からの丸パク情報だったのですが、なお悪いことに、サッチャーやレーガンの時代から始まったネオリベ、つまり新自由主義の政策だけでなくその精神が広く米、英、仏を中心とする西側に蔓延した結果、彼らにはもう二次産業の基盤がごっそりとなくなってしまいました。
ロシアは彼らに対してGDP比で3%しかない経済力で闘っているのに、なぜ負けないのでしょうか?
それは、GDPで評価される経済力が全部嘘っぱちだからです。
いったい成田悠輔さんなどは一般人の前にでてきて何をやりたかったのでしょうか?
観念的で思念的で演繹的世界の研究ならば、この人は幸せだったろうにと思います(現実から遊離するということ、合理主義者や哲学が好きな人、ファクトを大切にしない人、ア・プリオリ性をいつのまにか前提にして勝手に話を進める人が好きな事)。
ケインズは自らの試論に疑問を持ち、それを解明しようとしていたそのときにこの世を去ったのですが、アメリカを覆う経済主義は教育部門でこそそのイデオロギーは猛威を振るっていいそうですね。

「帝国以後」、すなわちパックス・アメリカーナ以後の世界について。
世界は多極化しているだとか、リーダー不在だとか、民主主義や資本主義の危機だと言われていますが、そんなことはない。
エマニュエル・トッドに対して、はるかに有名で影響力の強い歴史家にユヴァル・ノア・ハラリという人がいます。
しかし、数十年後には彼はエセ歴史家の烙印を押されることでしょう。
近代国家とは、産業国家とは、民族とは、ネーションステートとはなにかを解き明かした名作中の名作の古典に、アーネスト・ゲルナー著作の「民族とナショナリズム」がありますが、その中にこんな話があります。
かいつまんで言えば、歴史上、ハラリのような支配者側の思想をタラタラと述べて体制順応主義に奉じるアナロジー的悪魔崇拝者、アンチキリストが何度でも出現するのです。

エマニュエル・トッドはソ連崩壊を預言し、トランプの出現を預言し、ウクライナと西側の敗北を預言し、そして20年以上前から、今度はアメリカの崩壊を預言している、まさに預言者です。
いや、じつは、アナロジカルに言えば、彼は預言者ではなく祭司なのです。
アカデミー界に拒絶されたからこそ、そして何世紀に一人の奇跡の個性を持つがゆえに誕生した真の研究者、トッド氏いわくこれを発見者という、そんな人の本を数千円で読めるなんて本当にラッキーだと思いました。
元外務省情報分析官の佐藤優氏いわく、我々は情報戦の前に思想戦で勝たなくてはならない!
世の中にはエセ歴史かとエセ預言者、そしてアンチキリストがいくらでもうじゃうじゃいします。
僕はこれからも、優れた思想家の眼をまずもって養っていきたいですね。
そんなおはなしでした。
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